肩関節の構造と作用
鎖骨、肩甲骨、上腕骨から構成され,これらと胸郭で肩関節・肩鎖関節・胸鎖関節・肩甲胸郭関節の4つの関節をつくる。特に肩関節は球関節といわれ全関節中、可動域が最も大きく360°の可動範囲があり左右の手を用いれば身体の隅々まで手の届かない所は無い位よく動く仕組みになっている反面、関節の安定性としては筋肉や靭帯に依存している為損傷が多発しやすく脱臼も非常に多く発生する部位です。また加齢と共に劣化し易い部位の一つで四十肩、五十肩はよく知られている病名です。
肩関節疾患
基礎診断:鑑別診断:整形外科疾患,内科的疾患,関節可動域減少,自発痛,夜間痛,運動痛,増強程度等を念頭において診察が必要
1. |
男性:外傷性肩関節前方脱臼・反復性肩関節前方脱臼・肩鎖関節脱臼・腱板断裂 |
2. |
若年者:ルーズショルダー・反復性肩関節前方脱臼 |
3. |
自発痛:骨折・化膿性肩関節炎・悪性腫瘍・腱板石灰化症・高度の関節拘縮。運動痛 |
4. |
疼痛を伴わない運動障害:上腕神経叢麻痺,腋窩神経麻痺,前鋸筋麻痺 |
5. |
運動時の雑音:ばね肩(弾発症:三角筋中部線維束状拘縮),弾発肩甲骨(肩甲骨と胸郭の解剖学的関係) |
6. |
時間の経過:腱板断裂・腱板石灰化症 |
7. |
外傷の有無:腋窩神経麻痺・腱板断裂・外傷性肩峰下滑液包炎 |
8. |
拘縮のないもの:腱板断裂・麻痺性疾患 |
9. |
僧帽筋萎縮:副神経麻痺 三角筋萎縮:麻痺性疾患 |
肩関節の不安定症
1反復性(再発性)肩関節脱臼(観血治療の選択肢を説明をすること)
| ・ | 脱臼を契機として脱臼が繰り返される(自分の意志で脱臼と整復を繰り返す随意性脱臼は別な疾患で精神的な要因) |
| ・ | 関節包前部の断裂及び弛緩・延長,関節唇前部の剥離,関節窩前部の剥離骨折,肩甲下筋の弛緩,延長が誘因 |
| ・ | 外転,外旋位(投球動作,テニスのサーブ動作など)での脱臼不安感テスト(アプリヘンションテスト) |
| ・ | 3~6週の内転内旋位固定とその後の運動療法,筋力増強訓練で反復性への移行防止 |
| ・ | ほとんどが前方脱臼。10才代外傷性脱臼の90%以上,20才代80%,30才 |
| ・ | 保存的には筋力増強訓練,根治的にはOP |
癒着性肩関節包炎(肩関節周囲炎、凍結肩)
古来,四十肩、五十肩と呼ばれているように40歳~60歳代に多く発生する肩関節を中心にその周囲の疼痛と運動制限を来たす疾患である。徐々に発病する為に悪化してから来院するケースが多く見られる。痛みは夜間痛や寒冷時痛、運動時痛(結髪動作、帯締め動作、更衣動作など)が著明で上肢全体、頭、首など広範囲に及ぶ場合がある。
凍結肩とも言われるように手を上げる、後ろに捻る、横に上げるなどの動作が肩の拘縮の為に殆ど困難となる。「月日がたてば治る」「時期が来れば治る」とか一般的にいわれるが自然治癒するにはかなりの日数がかかり、痛みも容易に改善せず体力の低下にもつながってしまう。痛みが優先の時期と拘縮が優先の時期があり個々によってそれぞれの病態が違うので来院して治療を受けた方が得策である。
肩関節捻挫
肩関節は可動域が大きい為、他の関節と違って「捻挫をした」という意識が薄いのが現実である。肩関節の捻挫の例として乗り物のつり革につかまっていた際、急停車やブレーキにより肩が伸ばされた際や手を突いて転倒し、肩に衝撃が加わった際に発生する。
早期に治療がなされないと炎症の発生と共に次第に肩が動きづらくなり、肩関節周囲炎に移行する場合が多い。
肩関節脱臼
多くは青壮年のスポーツ、交通事故などの外傷に伴って発生する。
殆どが肩の前方に脱臼し上肢運動不能となる。脱臼痛、肩関節の変形が著明。
可及的早期整復を必要とし時間の経過と共に整復困難となり観血的治療となる場合がある。
野球肩(投球障害肩)
野球の投球動作における急速な加速運動と減速運動の連動性に原因して発生する。
広背筋、三角筋、大円筋、大胸筋などの損傷に伴い投球時の肩関節痛が強く投球動作が困難となる。
肩腱板損傷
腱板(棘上筋、棘下筋、小円筋、大円筋、肩甲下筋、)の特に棘上筋がスポーツや転倒で肩関節の運動動作時に挟まれ損傷したり、使い過ぎや加齢と共に劣化し、肩を動かす度にグキグキ音がし、強い痛みを伴う。夜間痛が著明。
内臓からの関連痛
狭心症,肺尖部腫瘍,胸部大動脈瘤,肩部骨髄炎,結核,骨肉腫,化膿性関節炎,リウマチ,骨の転移癌等


